忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「なまづま」読書感想

タイトル 「なまづま」
著者 堀井拓馬
出版社 角川書店
発売日 2011年10月25日
文庫 236ページ


第18回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作

 

f:id:mitemite753kakuyo:20180714092601j:plain

(注意:このレビューはオジサンの独断と偏見で基本的には「読んで良かった」と思い込みながら書いた記事ですのであしからず)

 


<<かるーい話のながれ>>
最愛の妻を亡くした主人公の「私」は抜け殻の状態で毎日を過ごしている。
そんな「私」の仕事は不快な激臭としつこい粘液を絶えず出し続ける不死身の怪物ヌメリヒトモドキの研究をすることだ。
ヌメリヒトモドキとは不死身の人型のナメクジみたいな生き物。
世界中?に存在している巨大な女王個体から不定期に生まれているらしい。
ヌメリヒトモドキの特徴は不死身、数カ月くらいに一度女王個体と融合しないと発狂するくらいの発作が起こる。
特殊な能力があり、人間の死体(生きている人の一部でも良い)を少しづつ食べさせて、その死体の記憶や経験を聞かせ続けることで、何度目かの女王融合の後に完全にその死体のコピーとして姿も性格も作り替えられる。
ただし激臭と粘液と不死身はそのままで。
そんなモドキさんを研究する毎日な「私」だが、好意を寄せてくれている女性研究員や、昼食時にだけ一緒に会話をする中年警備員、失踪した研究員の完全人間個体化したヌメリヒトモドキなどなど個性的な面々に囲まれて日々を過ごす。
そして「私」はついに、案の定、やっぱりソレをやってしまう。
「私」は自宅のバスタブに1体のヌメリさんをおびき寄せて監禁し、妻の髪を少しづつ食べさせながら彼女との記憶を読み聞かせる。
何度目かの女王融合を経て、かなり生前の妻に近いヌメリさんになるのだが・・・。
という感じのストーリー。


<<読んでみてどうだった?>>
まずは異常な、だけど好奇心を刺激する設定がお気に入り。
徐々に数が増えて行き、不死身なので駆除も出来ないヌメリの怪物・・・それでも人々はナメクジと同じくらいにしか考えておらず、「モドキ叩き」という棒で追っ払いながら人間の生存圏を護っている世界。
ちなみに完全人間個体の性質は世間には秘密になっているようで。
(現在確認しているのは、アイドルの女性が作った自分自身の完全人間個体と 同僚の研究員から作った研究用の完全人間個体の2体だけみたい)
もう酷いことが起こること間違いなしって設定だわ(*´▽`*)

 

あと本書はわりかし少ないページ数なのに、それを感じさせない濃厚な展開が良し!
ヌメリヒトモドキの研究から、モドキさんの秘密の完全人間個体化調教、女性研究員とのロマンスモドキ・・・そしてヌメリヌメラレな衝撃の展開とホラーな結末・・・。
いやー、これは面白かった!
久しぶりに最初から最後まで熱中してのめり込み読みしちゃったよ。

 

そして序盤はあんなにも毛嫌いしていた醜悪で害獣にしかならないヌメリヒトモドキが、いつの間に愛らしく感じてしまい、さらには酷い展開にならないでくれと心配してしまうくらいに魅力的なキャラクターになってしまう終盤。
文章の技術とストーリー展開の才能がうまーくブレンドされてこの味わいが作られているのだ!(てきとーな考察です)



<<印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど>>
印象に残っているのは研究員の一人が自分の完全人間個体を作って、そのモドキさんを色々と研究しているシーンだね。
(ちなみにモデルになった研究員は精神を病んだのか、謎の失踪をしている)
女王融合の欲求を満たさないままで監禁放置したら、モデルにされた研究員の人間性は発狂して無くなってしまうのだろうか?
という実験にて。
融合欲求を訴えはじめてから数カ月が経過した状態の失踪研究員モドキさん。
観察部屋から対象を見てみると、もはや人間性のかけらも無くなったように意味不明なことを喚き散らしながらスーパーボールのように狭い部屋の四方八方を跳ね回るモドキさん。
そのたびに飛び散る粘液と激臭!
しかしモドキさんは不死身なので、ずっと喚いて跳ね回り続けるだけ。
人間の探求心とはかくも恐ろしき・・・そしてそれに没頭して読み込むオジサンの好奇心もまた・・・・・。