忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「風の日にララバイ」読書感想

タイトル 「風の日にララバイ」
著者 樋口有介
文庫 329ページ
出版社 角川春樹事務所
発売日 2013年9月14日(新装版)


<< かるーい話の流れ >>

実家が裕福なおかげで毎日酒を飲んでは役にたたない発明品ばかり作っている39歳の佐原旬介(学者くずれ)という男が主人公。
家族は離婚した妻(才色兼備)、志保美との間に出来た一人娘の亜由子(才色兼備)と昔からのお手伝いであるお松(おばあさん)の三人暮らし。
亜由子には発明品を馬鹿にされてお松さんにはもっと真人間になれと言われて、夜になったら酒を飲む平和な毎日を送っている。

ある日、同級生で刑事の正木が訪ねてくる。
話を聞くと急成長の宝石店を経営している志保美が何者かに刺殺されたとのこと。
別れた妻に未練は無いが、一人娘の気持ちを落ち着かせる為だと自分に言い聞かせてなんやかんやで独自に犯人捜しを開始する佐原。

大学時代の同級生、元悪徳警官の探偵、宝石デザイナーを目指す女子学生、志保美の店で働く美女。
彼らと関わって行きながら、佐原は昔を思い出し、知らなかった志保美を知っていく。
なぜ志保美は殺されたのか?
犯人は一体誰なのか?


<< 特に良かった部分・良かったセリフ・シーンなど >>

佐原が聞き込みに行った丸越の瑞宝堂という宝石店で働く男性店員のセリフが印象に残った。
―――「いい女っていうのはどうしてこうみんな、すぐにいなくなるんでございましょうねぇ」―――
このセリフはなんだかしみじみと共感してしまうよ。
(おじさんの周りにもまったく美女が居ないのは何故なのだろうか・・・)
樋口作品ではいろんな美女がよく現れるけれど、最後のほうでいつも去っていく気がするな。
まあそこが爽やかでもあり切なくもあり、良い味出しているんだけど。

あと良かった部分は、沢村萌という佐原の探偵ごっこに飛び入り参加してくる宝石デザイナー志望のポニテ女子大学生。
元気系&少し不思議系な女の子で、だけど実はこの事件と繋がっている部分があったりっていう人物。
「風の日にララバイ」は中年男女が中心の作品だから、こういうストーリーを和ませてくれる若いキャラクターがいると読んでいて雰囲気が明るくなるんだ。
それにちょっとクセがあるけど憎めない感じが可愛らしいんだよね(*´▽`*)
(娘の亜由子ちゃんも美人なんだけど、隙がないというかあたりが強いと言うか、綺麗なバラには棘がある的な感じでねぇ)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

うーむ、気になるとしたら元悪徳警官で探偵をやっていた上条って男。
こいつは強請っている相手に自分が殺されるかもって考えはなかったのかね?
泥酔していたとはいえ・・・・いやむしろそんな場面でがぶがぶ酒飲むなよ(笑)

あとは相も変わらずだけど、この本でも犯人は最後まで分からなかったなぁ・・・・なーんかみーんな怪しく見えてきちゃうんだよねぇ。
意外性を予測し過ぎて、この展開はもしや亜由子が犯人!?なんて馬鹿なことまで考えてしまったわ。
いやはやお恥ずかしい(>_<)


<< 読み終えてどうだった? >>

毎回思うんだけど、この作者の作品は本当にキャラクターがみんな良い味を出している!
(それ以外はけっこう普通な推理小説かな、いやハードボイルド小説?)
話の内容も展開も別に普通なものなのに、こうも同じような作品を買い集めてしまうのはきっと登場人物達が魅力的だからだと思う。
この作者の独特で軽快な会話劇もいつの間にかすごく気に入っているおじさん。

個人的に「ピース」はなかなか予想外で衝撃的な展開だったな。
あと「刑事さんさようなら」もまさかの展開系。

「風の日にララバイ」では宝石業界の裏の一面を覗かせてもらいましたよ。
煌びやかに見える物ほど、裏のビジネス内容は黒いね~。
事件の展開はまあまあだし、犯人も意外だけど驚くほどではない。だけど事件解決後の寂しさや切なさ、あと父親と娘の愛情あるやりとりとか、最後に沢村萌の醸し出す爽やか感が良い読了感を与えてくれる作品だった。
(相変わらず曖昧で分かりにくい感想しか書けないおじさんでスミマセン)


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

貴金属の大手メーカーはほとんど時計屋ってところ。
時計と宝石はセットなのが業界の常識らしい。

宝石の原価は世界中同じで、値段の違いがあるとすればデザインとお店の格って書いてあったけど、ファッション業界でも一緒だよね。
(普通のTシャツにロゴが書いてあるだけで数万円とか)

人口ダイヤは簡単に製造できるし、プロでも見分けは難しいから一般人ならなおさら騙されやすいらしいから気を付けよう。
まあ買う機会があるか分からんが(;´・ω・)

5Pより。
―――「そういう世間の評価に対して忸怩たる思いがないわけでもないが・・・」―――
~goo辞書「じくじ」より引用~ 出典:デジタル大辞泉(小学館)
[名](スル)深く恥じ入ること。
[ト・タル][文][形動タリ]深く恥じ入るさま。「忸怩として非礼を謝す」「内心忸怩たる思い」


6Pより。
―――不遜な眼つきでライトのついた製図版を―――
~goo辞書「ふそん」より引用~ 出典:デジタル大辞泉(小学館)
[名・形動]へりくだる気持ちがないこと。思いあがっていること。また、そのさま。「不遜な態度」


13Pより
―――作ったような慇懃さで、男が言った―――
~goo辞書「いんぎん」より引用~ 出典:デジタル大辞泉(小学館)
1 真心がこもっていて、礼儀正しいこと。また、そのさま。ねんごろ。「慇懃なあいさつ」
2 非常に親しく交わること。「慇懃を重ねる」


<< 挿絵で見たい場面や物など >>

母親の死を知ったショックを何とかして紛らわそうとして、俊介にウィスキーを要求する亜由子。
しかし初めてのウィスキー(アルコール)だったので思わず噴き出し、そのせいで酒まみれになった旬介に頭からタックルして堪らず泣きだす。
カーディガンにしがみついて泣く彼女を優しく抱きしめる旬介。
「何飲ませたのよ。私に何を飲ませたのよ。私はウィスキーを飲ませてといったのに」
「わかった。わかったから・・・・」
↑このシーンでいつもツンとして隙の無い亜由子ちゃんがおいちゃんの中でグッと「可愛い株」を爆上げしたのよ(*´Д`)