忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「ガンダム・センチネル」読書感想

ガンダム・センチネル」(単行本版)
著者 高橋 昌也
単行本 265ページ
出版社 大日本絵画
発売日 1990年7月1日

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<< かるーい話のながれ >>

ZガンダムとZZガンダムの間のお話。
地球人サイコー主義のティターンズがやりたい放題やったZガンダム時代、その騒乱が終わった後の地球連邦政府は人類みんな仲良くやろうよ主義のエゥーゴにやたら気を遣う政治を行っていた。

それに意義を唱えたのがティターンズ寄りな考え方の地球連邦軍MS教導団の方々。
(いわゆる歴戦のMSパイロット達)
エゥーゴ寄りな連邦政府には付いていけないってことで、反旗を翻し自らをニューディサイズと名乗る。

せっかく戦争が終わってまとまりかけてた時代なのに、そんな奴らが現れたと知れたら同調する者達がまた騒ぎを起こすに違いないってことで、早急に討伐隊が組まれてニューディサイズの立てこもるぺズン宙域へ向かわされる。

タスクフォースと名付けられた討伐隊はAI搭載型Sガンダムの試験用に集められた新米パイロット達で構成されている。
主人公リョウ・ルーツは母親が開発に関わったAI「アリス」が搭載されたSガンダムパイロットに選ばれて、リョウ自身は何も知らないままSガンダムを駆って戦場に出撃していくのだが・・・。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

とにもかくにも、軍人の男達しか出てこないこの作品。
んでもって主人公のリョウ・ルーツは言うこと聞かない生意気な不良の新米パイロットで、最初は同期の仲間や上官とも喧嘩ばかりな困った奴なんだけど、同僚と殴り合ったらすぐに仲良しになっている子供のような性格は最近のロボット物だと新鮮に感じたからアリだね(笑)

あとはこの小説で唯一の女性(?)キャラであるSガンダムのAIであるアリスちゃんが妙に可愛かった。
むさっくるしい漢ばかりの作品だからありがたく感じたのかもしれないね、でもリョウの感情と戦闘を経験してどんどん自我を形成していく様はとても愛らしく感じちゃうんだよ(*´ω`)
(リョウの母親が作って、パイロットである息子を守るって設定も良いよね)

それとSガンダムパイロット選定の基準が面白かった!
じゃじゃ馬のような常識で判断できない危険な男をまずアリスに与える。
そうしてアリスを男のわがままが理解できる良い女にしてから、熟練パイロットを与えて完璧なAIへと成長させる計画。
26Pより。
―――少女は初恋の男とは、得てして結ばれないものだ。ALICEは最初から熟練パイロットのデータとの結婚を義務づけられているのだから。―――
なんだか妙にロマンチックな設定ですな(笑)

あとこれ!ガンダムと言ったらもう激しい戦闘シーンでしょ(=゚ω゚)ノ
やっぱりSガンダムガンダムmarkVの戦闘シーンは熱くなるねぇ。
互いに全部の武装を駆使して戦うんだけど、やっぱり新米パイロットのリョウのほうが弱いし度胸も無い!実力と経験の差で当然リョウが追い込まれてやられそうになるんだけど、そこでアリスちゃんが発動して腕を振るう。
markVのインコムとSガンダムのリフレクターインコムの描写も面白くて熱かったね。
微妙に使えないリフレクターインコムがまたなんとも(;^ω^)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

気になったところはSガンダムはわかるけど、他のガンダムタイプは新米じゃなくて熟練達を乗せても良かったのでは?って思った。
一応他のパイロット達もSガンダムのテストパイロット候補だから、なるべく同じガンダムタイプで慣らしておいたほうが良いってことかな?

もひとつ気になったのは、人間パイロット推進派の妨害工作事件で封印されていたはずのアリスはどうして起動していたんだろ?
アリスを作った技術主任であるキャロルが嘘をついて封印していなかったのかな?
(リョウの母親は自分の子供そっちのけでアリス開発者の一人で研究に没頭するも、妨害工作の爆弾からシステムを庇って死亡したとのこと。だからリョウもあんなに捻くれた青年になっちゃったのかも)

最後に、ネオ・ジオン側も人が悪いよね~。
弱体化したニューディサイズにゾディ・アックっていうMAを受け渡すんだけど、このMAは欠陥不採用になったヤツなんだよ。
その欠陥部分は事前に説明してあげても良かったと思うんだけどなぁ。
注意点さえ事前に理解していればそれなりの戦力にはなるだろうに。
土星エンジン搭載の欠陥傑作機ズダとかもそうやって運用してたし)



<< 読み終えてどうだった? >>

ガンダムって言ったら、終盤でSF(少し不思議)なパワーとかでファンタジーなことが起こったりしちゃうストーリーが多いんだけど、この作品はガチガチのミリタリー小説で不思議なパワーとかは全くない。

だけどそういう不思議なモノはガンダムに欠かせないとおいちゃんは思っている。
この作品でその役割を担っているのがアリスちゃんな訳だ。
新米パイロットからいろんなことを読み取って成長していくめっちゃ強いAIって、良いじゃん。
(SFって感じじゃん)

人間の成長と自立がテーマって感じの小説だったかな。
次世代を作っていく若者達、次世代を育てていく大人達、そして彼らを通して完璧な存在へと成長していくAIのアリス。
結局完璧な存在へと進化できたのはニュータイプに成れたのは)アリスなんだけど、最後にアリスは人間に託したんだからしっかりがんばんないとね。
(人類も早く簡単に相互理解し合える存在にならなくてはいけないよ!)

個人的にはものすごく楽しく読めたんだけど、やっぱりそこはガンダム好きだから楽しめたんであって、特に好きではないっていう人には読んでもあまり楽しめないかも知れない。

読了感としてはニューディサイズの反乱から終結までしっかり綺麗に、最後まで描かれていてハッピーエンドだったからスッキリだった。
というか、ず~っと気になっていた小説を読むことが出来たからホントに大満足なのだ。
ありがとうアマゾン( ̄▽ ̄)


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

234Pにて、オーロラを眺めながら兵士達が歌うシーン。ガンダムUCでもこの歌?というか題名が使われていた。
そしてここでも「虹の彼方に」が出てきたけど、ガンダム作品と何か深い繋がりとかがあるのかな?
それともアリスだからか?

ガンダム小説なので挿絵もけっこう付いている。
インコムを装備して熟練のパイロットが操るガンダムmarkⅤ。
ニューディサイズが強奪した機体がタスクフォースに襲い掛かる。

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オフショーが操るゼク・ツヴァイ。
ニューディサイズの主力機であるゼク・アインの後継機で、ゴテゴテなボディにモリモリな武装モビルアーマーみたいな機体。(おじさんは大好きです)

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151Pより。
―――古いものや小さな意見を見過ごしにする様な現在の地球連邦政府は、いずれ遠からず馬脚を現すに違いない―――
「ばきゃくをあらわす」
隠していた本性や悪事がばれることのたとえらしい。

231Pより。
―――ALICEは今、人間だった。いや、性にも年齢にも、いかなる物にも束縛されない存在。スプリーム。それは超越した存在。―――
「すぷりーむ」
様々なことに対して最高の、最大の、究極のっていう類の意味かと。

タイトルより。
―――ガンダム・センチネル ALICEの懺悔―――
「せんちねる」
一つは歩哨、前哨、監視員っていう意味。
もう一つは、コンピュータ用語でデータの終了を示すデータのこともそう呼ぶらしい。


<< 挿絵で見たい場面や物など >>

229Pより。
大気圏突入の最中、切りかかってくるオフショー搭乗のゼク・ツヴァイを掴んで地球に放り投げるSガンダム

敵であるオフショーのことを理解して悲しみながら、両親の所へ還るようにと願うアリス。

その想いは人間であるオフショーにも届いていた。

大気圏突入時の高熱で燃やされるコクピットの中、オフショーは軍隊に入ってから初めて母を思いながら泣いた。ニュータイプになったアリスと人間のオフショーはこの瞬間に相互理解し合えたのかもしれない)