忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「祝山」 読書感想

「祝山」(文庫版)
著者 加門七海
文庫 245ページ
出版社 光文社
発売日 2007年9月6日

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<< ここ最近の思うこと >>

数年前からちょいちょいと友人達と登山に行ったりしているおじさん。(最近はあんまりだけど)
初登山の時に参加しなかった友人から(ギャグのノリで)「山を舐めるな!」と言われたなぁ。
登山中の事故の危険っていう他に、こういう危険もあるのかぁってリアルガチで怖くなったわ。
次から登山する時は必ずお守りを持っていこうと決意させるくらいゾクッとする小説だったよよよ(>_<)


<< かるーい話のながれ >>

ホラー作家・鹿角南(かづのみなみ)という女性が主人公。
次回作で肝試しに行ったら酷い目にあった若者達の話を書こうとしているが、なかなか筆が乗らずにぬんぬんと悩んでいる。(面白半分で肝試しに行くような奴らは自業自得じゃいっていうスタンス)

そんなある日、鹿角のもとに矢口という友人からメールが届く。
しばらく疎遠になっていた矢口は、「最近肝試しをしたら色々おかしなことが起こり始めたから話を聞いてほしい」と依頼してきた。
あれこれいろいろ悩んだ末に、好奇心に勝てなかった鹿野は矢口&肝試しメンバーに会いに行くことに。
集まった場で肝試し現場の廃墟を写した写真をいくつか見るのだが、特におかしな写真は無かった。
(ちょっと変なのはあったけどね)

しかしそのメンバーの中で一人だけまともそうな若尾という女性から改めて話を聞くと、肝試しの時に自身が奇妙な現象に遭遇したことを鹿角に打ち明けて来た。
本能的にガチなヤバい系かも知れないと悟る鹿野。
それから次第におかしくなっていく肝試しメンバー達。
若尾だけは変わらないのだが、異常な雰囲気に怯え始めて鹿角に助けを求めてくる。
お節介焼きな鹿角は断り切れずに奇妙な現象の原因を探し始めるのだが・・・。

急に襲ってきた苦痛に倒れる鹿角、監禁状態で助けを求める若尾、変わり果てた矢口、腕の病気が治らない田崎、廃墟の写真撮影の虜になる小野寺、そして鹿角と矢口の共通の友人である里美!(←里美はあんまり関係ないけど・・・)
彼らに訪れる結末とは如何に!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

序盤の鹿角の心境について、心霊スポット巡りをして酷い目に遭う連中を貶したくて仕方ないっていう考え方に共感したね。
曰くのある場所で遊ぶ馬鹿者たちは、酷い目に遭わなきゃ治らないってずっと思っていたし。
だけど読み終えてから、ほんとになんでそんなことしたんだよって感じの悲しさがあったわ(´-ω-`)
被害者の周りの人々も悲しませることになるから、怪しい所には行かないほうがいいんだよ。

つづいて印象に残った部分から。
ホラー小説なんだからホラーシーンに決まってるだろ(=゚ω゚)ノ
肝試しメンバー達が務めている輸入食品会社の小売店「ガイア・バザール」にて。
最近、店舗の中に入ると嫌な気分になると訴えてくる若尾。
確認する為に鹿角と若尾の二人で閉店後の「ガイア・バザール」に入ってみる場面。
なんの変哲もない狭い店舗だと思って入ってみたら・・・・・急にガクッと!!
そしてちょっとオコな気持ちになった鹿角は気合を入れ直してもう一度入店。
不気味な空気を醸している場所を見つけて事務所に入ってみると・・・・・
そこに置いてあるパソコンがぁぁぁ(; ・`д・´)
もうここを読んでいる時は体を小さく丸め込みながら、ドキドキのガクブルで読んでいたわ。
(きっと周りの人に変な目で見られていたんだろうなぁ)
いや~しかし、正体や目的が分からないモノの恐怖ってスゴイよね。


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

怪奇現象の正体だとか、ナニカが何をしたかったのか?とか、あの人達は結局どうなったの?っていうのがはっきりと分かるオチではなかったのがちょっと(;^ω^)
からしっかりハッキリしたオチの好きな人には不向きだろうね。
(おじさんも設定ハッキリ派だけど面白ければ良しとします)
でも逆に最後まで正体や原因が不明っていう設定がリアルな怖さの秘訣なのかも。

続いて、終盤の若尾が鹿角に助けを求める場面にて。
あの程度の監禁状態なら、若尾の親に電話して「誰ぞが危篤だからすぐに帰ってこい」とか演技してもらえば脱出できたんじゃ・・・。
それ以外でもやり方はいろいろあったと思うけどね。
でもそれじゃ話が面白くならないわなぁ。

あとあと、こいつはいつもおじさんが思うことなんだけど、鹿角は心霊関係も信じていて怖がりでホラー作家の仕事もしているのに、何の備えもしていないのが気になっちゃうよ。
普段からお守りもつとか、怪しいところに行くときはより強力なお守りだとか小道具を持つとか、知り合いの強力な力を持つ霊媒師に相談だとか・・・・・・
いや、この小説に霊媒師の登場はナシだな(ヾノ・∀・`)ナイナイ

最後にこちら。
読んでいて思ったけど、句読点がちょっと多めについている文章だった。
この文章にリズムを合わせて?読み進めるテンポを合わせて読めば、ひょっとしてもっと臨場感たっぷりに楽しめたかも。(熱中するとどんどん読むスピードが上がるから難しいけどね)


<< 読み終えてどうだった? >>

はあぁぁぁ~、おもろかったぁ(*´▽`*)
なんで怖いモノはこんなに面白いんだろう?
そしてホラー小説だとなんでこんなにのめり込んで読んじゃうんだろう?
きっとフィクションだと分かり切っているからかな。
安全なところから怖い物を眺めるのって、安心して好奇心を満たすことができるやん。

「祝山」を気に入った理由はもひとつあって、意外にもポジティブな主人公、鹿角南さんというキャラクターがとても楽しませてくれたんだ。
自分に何かしらの攻撃をしてきたモノに対して「入院費くらい払え」と憤ったり、意味深なメールが来ているのを見て「うわ、わ」と奇妙な悲鳴を上げるとメールを開かずにすぐ消去!そして「消しちゃった・・・」と呟いて力なく笑ったり、マジでやばい肝試し現場にもう一度行こうと誘われて電話を切った後に「誰が行くかバカヤロウ」と呟いてみたり。
最初はかなりひねくれ者な女性作家なんだと思っていたけど、読み進めていくと凄く魅力のあるキャラクターなんだと気づかされた。
そんなんだから、最後なんて矢口さんよりも自らの行いを後悔している鹿角さんに対して同情してしまうおじさんがおりましたわ。

ホラー小説としては・・・・・最後のオチ部分で凄くゾクッとさせられるよ。
え!・・・これなんだかんだで実話系だったの!?ってことで急に身近な現実として祝山の恐怖を感じたしホラー小説として綺麗に終わったと思う。
(まあ裏表紙に著者の実体験を下敷きにしたって書いてあるんだけどね。事前にそこを読んでなかったからさ)

さてさて、いつもの読了感としては短い小説なのに中身は濃厚な恐怖と先の読めない展開&イイ感じの後味の悪さで大満足でしたわ!
だけどちょっと切ない気分。
いつか鹿角さんが「無事でよかった」と言って、肩を叩ける日が来ると良いけどねぇ(ノД`)・゜・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

8Pより。
―――即ち怪談、ホラー、オカルト。格好好く言うなら、フォークロア。―――
フォークロア
古く伝わる風習・伝承、またはそれらを対象とした学問。
あとは人づてに語り継がれて形成された都市伝説を指す用語ってことらしい。

14Pより。
――― 一時期は、結構、頻繁に会っていた。それが間遠になったのは、彼女が転職したからだ。―――
「まどお」
間隔が時間的または空間的に離れていること。
または織り目や編み目、結び目が粗いってことみたい。

19Pより。
―――ミステリーほどではないにしろ、好事家のみならぬ一般読者を獲得したという点で、―――
「こうずか」
ものずきな人、または風流な事柄を好む人って意味かと。

231Pより。
―――山中他界という言葉がある。または、マヨイガという伝承がある。―――
「さんちゅうたかい」
古来日本では、死者の霊魂は高いところへと昇っていく性質を持つと考えられていて、それは山の頂や高所にとどまって、子孫を見守ると信じられていたみたい。
死んだ人の魂はまったく別の世界へ行ってしまうわけではなく、現実の山の中に死者の霊が集まる他界があるという考え方、らしい。

8Pより。
―――「え、そうなの?私、地獄の釜が開く日って、幽霊がこの世に、ゾロゾロ出てくる日なんだと思ってた」―――
正月の十六日と、お盆の十六日は、みんな仕事を休みなさい。
旧暦の1月16日と7月16日は地獄で鬼が罪人を煮るための釜の蓋を開けて休んでいるので、 この世でも仕事を休んで閻魔さんにお参りをしなさいってことらしい。
商売をしている家では、使用人に休暇を与え仕事を休ませていたようで。

77Pより。
―――いわゆる「眉唾」という語もそれで、眉に唾液を塗れば、魔物にだまされないという俗言に、その由来がある。―――
「まゆつば」
昔は眉に唾をつければ狐きつねや狸たぬきにだまされないと信じられていたらしい。
そのことからだまされないように用心することって意味かと。「眉唾物」の略みたいね。

89Pより。
―――「好奇心は猫を殺す」という。私だって、それは承知している。―――
イギリスのことわざで、猫は九つの命を持っているってのがあるみたい。
そんなニャンコでさえ持ち前の好奇心が原因で命を落とすことがあるっていう意味だとか。
それが変化して『過剰な好奇心は身を滅ぼす』っていう言葉で伝わってもいるとか。


<< 登場した地域・道具・姿・形などの気になった画像 >>

45Pより。
―――朽ちた家は木造家屋だ。かなり本格的な造りで、上がり框などは、檜の一枚板を使っている。建てた当時は、さぞ贅沢な建物だったに違いない。だが、それも今は昔の話だ。―――


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「上がり框」の絵を描いてみたけど・・・。
しまった!
この絵じゃ一枚板じゃなくて、一本柱くらいになっちゃってるじゃん(笑)