忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「ロケットガール1 女子高生、リフトオフ!」 読書感想

ロケットガール1 女子高生、リフトオフ!」(文庫版)
著者 野尻抱介
文庫 352ページ
出版社 早川書房
発売日 2013年11月8日(ハヤカワ文庫 JA 版)


<< かるーい話のながれ >>

さっぱりとした性格で、しかし小ずるくもあり、ポジティブで負けん気の強い女子高生ゆかりが主人公。
彼女は母子家庭で、父親は新婚旅行の最中に突如姿を消したまま消息を絶った。

ゆかりはどうしても父親を見つけたくて、連休を利用して父親が消えたアクシオ島にやってくる。
そこでは世界初の一人乗り格安ロケットの実験が日本人達によって行われており、何度も失敗をしていて計画自体が打ち切り寸前の状態だった。
人権無視的な訓練に逃げ出すパイロット、ロケット打ち上げのネックは重さで、ひょんなことからその一団に合流した適正体型のゆかり。

現地での父親捜索協力と、小柄で体重の軽いパイロット、互いの思惑が交わった時ゆかりは世界初の女子高生ロケット・パイロットへの道を歩き出したのだったぁ~。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

発射予定日までスケジュールの無い中、新型燃料を使用して飛ぼうとする開発者の素子とロケットチーム。そんな危なっかしい物に乗るゆかりはファースト・パイロットなので当然反対するが、聞き入れてもらえそうにない。
遂にキレたゆかりは一人で新型燃料反対のハンストをすることにして、説得に来る者を全てつっぱねる。
そこへ現れたゆかりの母親が、妥協案を提示してハンストをすんなり解除させた。
そしてゆかりに言った言葉が印象的に残る。
187Pより。
―――「ハンストだけど、あんなにしちゃ上出来だったわ」
「自分から動かなきゃ、仕事は楽しくならないものよ。自分の枠をはみ出すぐらいにね」―――
いやもうこれは間違いなくその通りですよ。
現状を変えるにはそれなりの、もしくはそれ以上の行動を起こすしかない!・・・・・・・とりあえず自分のできる範囲からでいいから。
ゆかり母の粋な言葉がビシッと来た(`・ω・´)

もう一つはコチラ。
打ち上げで宇宙に出ることには成功したものの、デブリによる衝突で帰還不能になってしまったゆかり。
そこに奇跡的に現れたロシアの宇宙ステーション。
当然助けを求めるが、ロシア政府からは救援活動を了承しないという回答が。
ゆかりが直接ロシア宇宙飛行士に訴えた時の(脅しをかけるつもりで)相手の返事が思わずうるっときそうになった。
283Pより。
―――「我々は君と同じ、誇り高き宇宙飛行士として行動する。下の連中の指図などくそくらえだ」―――
まさに超王道なんだけどここでのこのセリフは誰でもグッとくるものがあるだろう。
むしろなんでゆかりがこの瞬間に惚れなかったのか不思議なくらい。いや、中身が普通の女子高生じゃないから惚れたりしないのかな?

そしてその後の展開でこのカッコイイロシア宇宙飛行士が・・・(;゚Д゚)
あの展開にびっくりだったわ(笑)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

個人的にはもう少し登場人物達の心境とか内面の描写がほしかったかな~。
元々この作品はラノベ?だったから仕方ないんだけど、ちょっと話の展開が二転三転し過ぎてダイジェストを観ているみたいに感じたかも。
逆に登場人物達の内面描写が少ない分、次々に変わる展開に力を入れていたのかもしれないけどね。

あと気になったと言えば、とにかく普通じゃない人が多すぎる気がした。まあこんな計画に人生賭ける人間なんだから、まともな人なんてほとんどいなくなっちゃうんだろうけど。
(最初に逃げ出した男性パイロットみたいに)
宇宙やロケットなどの情報がかなり詳しく描かれていてリアリティがあるからこそ、ぶっ飛んだ設定のキャラクター達が浮いちゃっていると感じたのかも。
と言ってもそもそもライトノベルなんだし、有人自作ロケットを打ち上げようとする人達なんだから変わり者ばかりになるのは当然かもね(;^ω^)


<< 読み終えてどうだった? >>

思っていたよりも、というか予想外なくらいに大きな問題が起こってもかる~くお話は進んで行く。
まるでマンガを読んでるみたいだったなぁ。

物語をストレスなく読み進めさてくれるのは間違いなく主人公ゆかりちゃんのおかげだと思う。
魅力的な性格の彼女がとても主人公って感じに活躍してくれるから深刻な場面でもストレス少な目で読み進められるんだ。
(流石に命にかかわるトラブルの場面では緊張したけどね)
ライトノベルとは言ってもロケット技術の説明は物凄く作り込んであるから読むのが大変だ。
はっきり言ってロケットの技術的な部分とか科学的説明とかは全然理解できなかったのに、不思議と最後まで楽しんで読み進めたよ。
理解できない部分があっても楽しく読める、これこそがライトノベルの形なのではないかと。

読了感は炭酸ジュースをキューっと飲み終えた感じでスカッとする気分。
だから珈琲の濃い~い味が好きな人には向かないかも。
毎度のことだけど、SF小説はやっぱり真夏に読むのがオススメなんだよなぁ~。
(ちなみにこの小説は9月に読んだから十分に夏気分だったよ!)

<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

12Pより。
―――CCV実験機のテストパイロットをしていた。―――
運動能力向上機(CCV、Control Configured Vehicle)というのはとにかく運動性能を優先して作られた航空機で、搭載電子機器にて姿勢制御とかして従来機では出来ない姿勢で空中機動とかしちゃうみたい。

324Pより。
―――曙光は刻一刻と輝きを増していった。―――
「しょこう」
夜明けに、東の空にさしてくる太陽の光。暁光。
そのほかには物事の前途に見えはじめた明るいきざし、など。

あとがきより。
2003年のコロンビア号空中分解事故によりNASAシャトルからカプセル型宇宙機の復活に取り掛かったらしい。
この作品でも一人乗り用小型格安カプセルが開発されていたね。
コロンビア号事故・・・聞いたことあるけど、怖くてwikiで調べられない(;´Д`)

同じくあとがきより。
「宇宙服MIT」
希薄な大気のある火星でなら実用になるかもしれないらしい。
本作でもゆかりとマツリが着ていた宇宙服だけど、画像検索したらなるほど確かに体にピッタリした宇宙服で、パツキンのチャンネーモデルさんが着ているのを見るとセクシーですな。


<< 挿絵で見たい場面や物など >>

163Pのところから。
夜中の海辺にて、隠れ食いで揉めているゆかり(中華の出前)とマツリ(儀式で魚獲り)は、偶然そこで月光浴をしていた数学教師の木下に鉢合わせてしまい、パイロット候補から外される為に「逆ダイエット」をしていたことを知られてしまう。
(マツリはただ純粋に食事が足りないので魚を喰いに来てただけ)
その時に二人は、木下が過去にパイロット候補に志願していて、検査の結果不整脈が見つかってしまい、候補から落ちてしまったことを打ち明けられる。
この時からゆかりのパイロットに対する心境が変わり始めた。