忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「ぼぎわんが、来る」読書感想

「ぼぎわんが、来る」(キンドル版)

著者 澤村伊智
紙の本の長さ 361ページ
出版社 角川書店 (2017/5/2)
発売日 2017年5月2日

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<< かるーい話の流れ >>

第一部では家庭想いなサラリーマンの田原秀樹が、まだ生まれいていない娘の名前を決めた頃から始まった怪奇現象に悩まされて、旧友の民族学者から怪奇系フリーライターの野崎と自称霊能力者の真琴を紹介される。
秀樹は怪奇現象の原因が自身の幼い頃に祖父の家で遭遇したナニカと同じモノだと二人に説明して、皆で対策を考えるがそれをあざ笑うかのように全員の居る目の前で超常現象が起こるようになってしまう。
秀樹は家族を危険から遠ざけるため、真琴の助言を頼りに単独で何とかしようとするのだが・・・。

第二部では秀樹の妻である香奈が主人公。
娘の千紗と二人で暮らしている香奈は、野崎と真琴に支えられながらも毎日を過ごしているのだが、ある日いきなり千紗が夫の秀樹とそっくりそのままな声色で秀樹と同じ言葉をしゃべりだす。
相談を受けた野崎と真琴は、例のナニカがまた田原一家に忍び寄ってきているのだと推測して、今度こそ香奈と千紗を守り抜こうとするのだが・・・。

第三部では野崎が主人公。
例のナニカ(通称ぼぎわん)に千紗を目の前で攫われた香奈は精神を壊して入院し、真琴は二人を逃がすためにぼぎわんに立ち向かった為、酷い傷と毒を貰う。
千紗を想う真琴は這ってでも助けに行こうとするが、そこへ真琴の姉である琴子が現れて野崎と琴子のコンビで千紗を救出しようと行動する。
そしてぼぎわんのルーツである田原秀樹の実家へ向かうのだが・・・。

いや~、この小説・・・・・・・・めちゃめちゃ面白いんですよぉぉぉ!!


<< 特に良かった部分・良かったセリフ・シーンなど >>

インパクトが強かったのはやっぱり第一部の部屋に飾ってある沢山のお守りが勝手に破れていく場面。
日本のホラーってジメ~っとした演出が多いから、複数の人間が居る所でこんなにはっきりと怪異現象が起こるってのは予想していなかったからけっこう驚かされたし、おおお!これはヤバいのが来たぞぉっていうドキドキ感も一気に高まった。
階段的に電話とか超常現象だとかで主人公に近づいてきているって感じさせる演出がとても面白かった。

もう一つは同じく第一部にて。
冒頭のシーンの続きなんだけど、ぼぎわんを迎え撃つ為に琴子の指示に従って秀樹が自宅で色々な準備をしていたのだが、まさかね~あんなことになるなんてね~( ゚Д゚)
「知恵を付けたということです」っていうセリフが一気に絶望的な気持ちにさせる。

全体的に謎の怪異である「ぼぎわん」が対象を追い詰めていく選出がすごく面白かった。

小説なのにテンポのいい映画を観ているような気分で、どんどん読んでいるページに顔が近づいて行っちゃって気が付くと画面に鼻がつきそうなくらい、真剣に読んでたわ(;^ω^)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

気になったところそのひとつ。
第一部の主人公である田原秀樹はあんまりにも自己中心的過ぎるのでは(笑)
よくもまああんな性格の男が結婚出来たなぁ。
子供が生まれるまではなるべくそういう性格を表に出さない様にしていたんだと思うけど、そんな簡単に隠せるモンかねぇ。
もしくは子供が生まれたことによって、そういう性格が大きくなっていったのかな?

まあこんな風に書いたけど、読んでいて驚きとゲス味を与えてくれる設定だったから個人的にはめっちゃアリなのですよ( ̄▽ ̄)

気になったところそのふたつ。
こういうホラー系のを読んだり観たりしていて思うんだけど、霊的なモノと直接対決する時は霊能力者はまあいいとして(信仰心を高めて力を高める必要があるとかさ)、傍にいる一般人はそれなりに防御を仕込むなり対抗手段を仕込むなり準備しないのはなぜなのかって思っちゃうわ。
(場を動きやすくするとか、防具を着けるとか、神聖な何かを仕込んでおくとか)

まあ、おじさんがそういう展開のが好きってだけなんだけどね。
でもこの小説はそんなの関係なしに面白かったから全然アリなのです。
(つーか前にもこんなこと書いてたような・・・(^^;))


<< 読み終えてどうだった? >>

もっかい言うけど、んもぉ~~~面白かった(≧▽≦)
おじさんはこういう未知の存在に対して対抗手段を持つ弱者達がなんとかして抵抗するっていう設定が大好きなのよ。
それにちゃんとホラーの雰囲気を壊さずに、不気味と恐怖をそのままに、専門家がなんとかしようと頑張るっていうのがたまらないのさ。
(最後の最後はちょっと能力バトル物になっていたけど、カッコ良かったからアリだと思います!)

この小説は「ぼぎわん」の恐怖がメインなんだけど、それに関係する人間の内面から出てくる「憎悪」って言うのがしっかり描かれていて、そっちのホラー要素もゾクゾクってくる恐怖感があるからさらにオモシロいのだ。
(何故ぼぎわんが田原家にやって来たのかっていう部分とかね)

ではではまとめとして、この小説は「ぼぎわん」の正体もちゃんと書かれているし(あくまで琴子の予測だけど)、結末も曖昧にしないでしっかり最後まで描かれているのが嬉しいし、何よりも最後まで熱中して読んじゃうくらいにピッタリおじさんの心にハマっちゃったわ。

という訳で個人的に物凄く楽しめたホラー・エンタメ小説だったのであーる(=゚ω゚)ノ
読了感は最高の満足感だった。
(最後の千紗が喋っていた寝言は、何か怖い意味があるのかな・・・?)


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

この小説は第22回日本ホラー小説大賞受賞作で、実写映画化もして「来る」っていうタイトルでもうすぐ上映されるようだ。
うーむむ、ちょっと興味があるけど、どーなんだろ(^^;)

位置№2610より。
―――強姦、準強姦といった法律上の区分にかかわらず、性犯罪加害者の約半数は既婚者だ。幼児虐待の加害者は、大半が実の親だ。―――
出典:「平成27年犯罪白書」6-2-4-8図「強姦・強制わいせつ 入所受刑者の精神診断別構成比」より
「婚姻状況」を見ると、既婚が23.0%、離死別が30.7%と、婚姻経験のある加害者が半数を超えています。
また何らかの障がいを持つ加害者は9.9%。つまり90.1%は障がいを持たない加害者です。
結婚生活を営み、障がいもない「どこにでもいる人」が、加害者となっているのです。
(↑マジですか。個人的には冤罪とかがどれくらい含まれているのか気になるところだけど・・・ねえ?)

位置№3407より。
―――午後十時。京都駅からほど近い、ラーメン屋「第一旭」。―――
京都ラーメンの老舗【京都たかばし 本家 第一旭】は京都駅すぐそば。
朝5:00から営業してんの!?
食べログを見てみたけど、チャーシューが旨そうだ!
いつか是非とも行ってみたいね。

位置№707より。
―――紀伊の国の小杉哲舟という儒学者が書いた随想だ。―――
「ずいそう」
折にふれて思うこと。また、それらを書きまとめた文章のことらしいです。

位置№2844より。
―――「でもお、廃仏毀釈とかのバタバタで、その辺の信仰も一掃されたって、学問的にはなってるんですけどねえ。」―――
「はいぶつきしゃく」
日本では明治維新後に起こった出来事みたいで、仏教関係の様々な物を壊して僧侶や尼さん、出家者や寺院が受けていた特権を無くすことらしい。
「神様と仏さま」とか「神社と寺院」とかを一緒にしないでね!って考え方を押し付ける運動・・・ってことで合ってるかな?


<< 挿絵で見たい場面や物など >>

位置№4038より。
―――「仕事は終いだ」ふう、と息を吐く。口がぶるり、と大きく脈打つ。「お前は消す」琴子はきっぱりとそう言った。―――
真っ暗なリビングで突然燃え上がる青白い炎。
同じ室内のひしゃげた窓枠の前で、仁王立ちで左手に煙草を燻らせている傷だらけの琴子。
氷のように冷たい表情で炎を見ている。