忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「最後の物たちの国で」読書感想

タイトル 「最後の物たちの国で」
著者 ポール・オースター
新書 227ページ
出版社 白水社
発売日 1999年7月1日


<< かるーい話の流れ >>

女性主人公のアンナが綴る手紙という形で物語は語られていく。
大陸の一つの国(イタリアかな?)が崩壊して、ほぼ秩序と文明の無くなった無法地帯で生きていく人々。
もちろん食べ物も衣食住も何もかもが生産されず消耗されていく毎日なので、国が崩壊してからは子供が一人も生まれていない状態。
なので暴力や殺人や窃盗、詐欺などあらゆる犯罪が日常的に起こる国が舞台だ。
その国へ調査派遣に行った新聞記者の兄を探すために、アンナは一人で旅立った。
国に入ってすぐに荷物を盗まれたり、物拾いのスキルを磨いてその日暮らしな生活を送ったり、たまたま知り合った老女と一緒に暮らすことになったり、別れがあったり恋の出会いがあったり、人肉加工屋に売り飛ばされたり・・・とんでもなく壮絶な土地で生きていくことを選んだアンナの物語は果たしでどんな結末を迎えるのか?

てな感じのデストピア系?なストーリーになっているのだ。
設定からして結構ゴアな表現とか、読むに堪えない部分が出てくるのかな~と思ったけれど、そこまで過激な表現は無くてむしろ綺麗にあっさりとした表現と内容だった。
もちろん人々は次々と死んでいくし、未来の無い絶望感がぎっしり詰まっているけど。


<< 特に良かった部分・良かったセリフ・シーンなど >>

良かったシーンというか、思わずほっとした部分かな。
同居させてもらっていたアパート部屋の住人が死んでしまって、一人残されたアンナは急いで荷造りをしている場面にて。
人が住めるまともな部屋は貴重なので、住人が死んだらすぐに他人が奪いに来るのだ。
そこへ押しかけてきて、部屋は頂くから今すぐ出ていけという略奪者達。
アンナは必要な物だけ持って部屋を出ていくが、全財産はズボンのポケットに入れっぱなしだったので略奪者達に見つからずに済んだシーン。
思わずホッと胸をなでおろす気分だったよ。
銭を見られたら間違いなく奪われること間違いなしだからさ。
ちなみにアンナは知り合ったおばあさんに、アンタは美人だからもっと酷い格好をしなさいと言われて、髪の毛も短く切ってもらっていた。だから強姦されずにその場から逃げることができたんだと思う。
もし女性らしい綺麗な格好で髪も長かったら・・・・・・おばあさんナイスアドバイス


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

一応こんなふうになってしまった国でも政府?はあるようで(しょっちゅう政権があっちやこっちに変わるようだが)警察みたいな人達もいることはいる。
この国で死体や排泄物はメタンガスエネルギーを生み出すのに必要不可欠なので、これらを勝手に処理したりすると酷い刑罰が与えられるからそれらは役人がすぐに持っていく。
などなど崩壊した国独特なルールがいろいろあって楽しいんだけど、細かい設定などはないみたいで漠然とした世界設定だった。
ファンタジー小説に近いかもしれないね。
個人的にはどうして国が崩壊したのか?とかその他のいろいろな設定を知りたいので、寓話系だったのがちょっと残念かな。
(でもアンナ個人のストーリーだから細かい所とか、国の最後とかは描かれなくても問題ないっちゃないか)


<< 読み終えてどうだった? >>

海外小説独特な文章にちょっと読むのが手こずったけど、個性的でぶっ飛んだ世界設定が好奇心をくすぐって、先の読めない展開が面白かった。
例えば極限まで体と精神を追い詰めて終末の準備を整えて、その時が来たら皆で一斉に奇声を上げつつ、死ぬ瞬間まで街を全力疾走する走者団とか。
自殺するときもなるべく高いところから飛び降りようとする自殺志願者達。
そして彼らが飛び降りる瞬間に魅入られて歓声を上げる見物人達。
狂った人々が見せるちょっと笑えるような日常風景が、おじさんにとって非日常的な設定で面白かった。
(ちなみに政府がコロコロ変わるせいで国外へ出るのもなかなか難しいみたい。それにまず移動する手段が無いって設定だったかな?曖昧でスマセン)
ただ基本的にはアンナの心情が長く綴られている構成なので、哲学というか文学というか、そういうのが好きな人ならもっといろんなところを楽しんで読めたと思う。
おじさんは文学系の小説はまだ苦手なジャンルなので(^^;)
読了感は結末がちょっとモヤっとする感もあるけど、それ以上に狂った世界感を存分に堪能できたからまあまあ満足かな~と。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

同じような設定の映画で「ザ・ロード」という映画がある。
こちらはとても面白く鑑賞させていただいた。アクションあり、結構ショッキングなシーンもあったり、話の展開もシビアで全世界規模に終末観満載でラストの予想もつかなかったりで。
ちなみに今回の「最後の物たちの国で」も、上記の「ザ・ロード」も知り合いのSさんから「見てみて&読んでみて」と言われて渡されたものだったりする。
実は後味の悪い作品などが好きと言うSさん。
ある時、Sさんにネットの評判からオススメしてみた「隣の家の少女(おじさんは怖くて読んでいなかった)をSさんが購入して、読了した後におじさんに渡された時はやっちまったと後悔した(;´Д`)


<< 挿絵で見たい場面や物など >>

国立図書館でサムという青年と共同生活を送りながら、やがて恋人同士になるアンナ。
狭い部屋で貧しいながらも、この国に来てから一番幸せな時間を過ごしていくシーン。
挿絵にするならここが一番いいかな~って思ったよ。