忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

野火 読書感想

タイトル 「野火」(文庫版)
著者 大岡昇平
文庫 224ページ
出版社 新潮社
発売日 1954年5月4日

 

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<<この作者の作品で既に読んだもの>>
・今回の「野火」だけ


<< ここ最近の思うこと >>

ネットの評判で映画『ハクソーリッジ』っていう戦争映画がめっちゃグロいってのを見かけたから、YouTubeで予告とか紹介動画を見てみたのよ。
上半身だけの死体を片手で持ち、もう片方の手で銃を撃ちまくりながら進むアメリカ兵には驚いたわ。
メル・ギブソンもいろいろ頑張ってるなぁ~、その熱意でアルコールのトラブルも克服してほしいね)

そんな動画を見ていたら、今回の小説の実写映画がオススメに出てきた。
名前だけは知っていたし日本の戦争小説に興味が沸いたので購入してみることに。
予告動画のクオリティーが思いのほか良かったから小説にも期待しちゃう。
ではでは、大岡昇平の戦争文学世界へ飛び込んでみるぜい(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

太平洋戦争末期、フィリピン戦線でのレイテ島が舞台。
肺の持病が再発して部隊を追い出された田村は、居座っていた病院陣地が攻撃されたことをきっかけにして、一人森の中を当ても無く進み続けた。
外国の戦地にて敗残兵となり、病気と飢餓に見舞われ絶望する中で生への執着は僅かに消えず、田村は彷徨い続ける。

馬鹿やろ、比島人、安田、組織的な攻撃、飽満の幾日、十字架、つんとする臭気、デ・プロフンディス、若い女声、パロンポン集合、面白え話、こーさーん、ここを食べてもいいよ、奇妙な運動、田村じゃないか、今にわかるよ、猿、復員、精神病院、黒い太陽・・・。

劣勢となった日本兵がレイテ島で絶望に覆われる時、人間の理性はどこまで消失していくのか。
生と死の狭間で揺れる田村は狂人となって生きるのか、人間として終焉を迎えるのか?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///このコンビ、絶対失敗するヤツでしょ///
病兵仲間の松永と安田、この親子ほど年の離れた二人が協力して生きていこうとする場面。
46Pより。
―――私はこれからまだ悪化すると思わねばならない状況の裡で、この速成の親子の辿る運命を知りたいと思い、実際奇妙な偶然からその目撃者となることになったが、しかしそれは何という結末であったろう。―――
若い松永は脚気で中年の安田は片足が熱帯潰瘍、敗残兵の陣地には食料も薬も無い。
間違いなく平穏な結末になんてならないでしょうに。
速成の親子の辿る運命におじさんの好奇心はクギヅケよ。

///お宝発見で思わずテンションが上がっちゃう///
敵の攻撃を受けて逃げた田村は、一人で島を彷徨い続ける。
空腹と疲労で限界に達しようとした時、田村は放置された畠を見つけた。
60Pより。
―――芋は歯の間で崩れるように噛みくだかれて喉を通った。何本目かで私は漸くその甘味を感じ、窪地へ降りて、そこを流れる水を飲み、芋についた土を洗い落とす余裕を持った。―――
飢餓状態からの食糧発見は冒険小説?にとって熱い展開だよ。
掘りだしてすぐにかぶりつく、まさしく生きる為に食うということ。
田村の喰いっぷりを読んでいると思わず芋が食べたくなってきちゃう。


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///昔からあった叫びなのかな?///
パロンポンへ向かう道中、米兵達が待ち受ける道を超えなければならない場所がある。
夜になるまで林の中に潜伏している田村達の前を、米兵の車両が通り過ぎていく。
138Pより。
―――兵士達はひたすら射ち続け、「うえい」と喚声を挙げながら、私のいる丘の林を盲滅法に射って、通り過ぎた。―――
陽キャ御用達(いつからだ?)の「うぇーい」という言葉がここで。
圧倒的有利な状況で銃を乱射する米兵、気が大きくなって「うぇーい」と騒ぐ現代の陽キャ
興奮時に似たような叫びを上げるのは人間の本能なのかね?

///カタツムリはヤバいらしいけど、蛭はどうなの?///
米軍の待ち伏せによって仕方なく来た道を引き返す田村。
砲撃で破壊された森には、いたるところに破壊された日本兵もあった。
空腹と絶望に侵されながらも田村は一人きりで彷徨い続ける。
145Pより。
―――雨が降り、木の下に寝る私の体の露出した部分は、水に流されて来た山蛭によって蔽われた。その私自身の血を吸った、頭の平たい、草色の可愛い奴を、私は食べてやった。―――
なんかのニュースでカタツムリを生で食べた人が取り返しのつかないことになってしまったってのは知ってるけど、蛭はどうなんだろうね?
う~む、どう考えても火を通した方が良いに決まってるわな。

///なーんでそこで教えちゃうのか、渡しちゃうのか///
体力の限界を迎えて倒れた田村は、運良く仲間に発見されて一命をとりとめた。
敗残兵3人の集まりは、危ういバランスで保たれていた。
182Pより。
―――私は何気なく取り出して、渡した。
「ほう。九九式だな。うむ、ちゃんと緊填してあるな。ふむ、こりゃ使えそうだ」
そういいながら、彼の取った動作は奇妙なものであった。―――
事前に手榴弾を教えるなって言われていたのにポロっと教えて、ポイっと渡して、さすがにうっかりし過ぎでしょ!とは言ったものの、何もない異国の戦地で彷徨い続けていたら誰だってどこかしらのネジは緩んだり外れたりするか。


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
田村視点で語られる内容は単独行動が多いということもあって、レイテ島の自然や風景の描写、田村自身の心理描写が結構なボリュームで語られている。
文学小説を愉しむスキルがほとんどないおじさんは理解できずに流し読む部分も多々あった訳で。
それに1951年の作品だから見慣れない漢字や表現も多々あった訳で(>_<)

戦争小説なのでもちろん死体とかバンバン出てくるんだけど、教養のある田村の視点で淡々と語られているのでネチネチしたグロイ描写などはあまり感じられなかったかと(おじさんの個人的な主観でね)

///話のオチはどうだった?///
こーゆー終わり方かぁ・・・・・えぇ~と、つまりどういうことなんだろ(・・;)
終盤の真相はわからないままで、読者の想像に任せる的なヤツかな?
まあ米軍の衛生兵が言っていたことが真実なんだろうけど、モヤモヤが残るよ。

受け止めることが出来ないくらいの現実に直面した時、人間は自分を守るため?正常を保つため?に頭の中を書き換えていく。
戦争が終わって日本での日常的思考に書き換える人もいれば、田村のように戻せなくなった人もいる。
でも最後に田村が出した結論を自身が受け入れることが出来たら、狂った精神は再生できると願いたい。

///まとめとして///
読む前は世にも恐ろしい内容、というか描写を期待していたけど(不謹慎でごめんなさい)読み終わって感じたのは、そんな単純な作品じゃなかったってことかと。
戦争文学小説って言葉が相応しいくらいに文学な小説だった、と思う。
敗残兵の日常が淡々と描かれていて、未来のない戦地で彷徨い続ける虚無感を凄く感じましたわ。

『野火』を読んだことによって会社の弁当がガッカリメニューだった時、あの比島よりはマシだわなって思えるようになったのは幸いかな。
文学小説熟練度が未熟なおじさんには少し早すぎた作品だったってことで満読感6点!(10点満点中)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

『野火』は第3回(昭和26年度)読売文学賞・小説賞を受賞しております。
1959年に市川崑、2015年に塚本晋也がそれぞれ映画化しております。
塚本晋也版をまずは観てみたいなぁ、リリー・フランキーの演じる安田がぴったり過ぎる(笑)

6Pより。
―――十一月下旬レイテ島の西岸に上陸するとまもなく。私は軽い喀血をした。―――
「かつけつ」
咳とともに血液を喀出すること。

7Pより。
―――彼は室の小さな芋の山から、いい加減に両手にしゃくって差し出した。カモテと呼ばれ、甘藷に似た比島の芋であった。―――
フィリピンではさつま芋のことをカモテと呼ぶらしい。
握りこぶしよりも小さく中身はカボチャのような色をした芋。
蒸して食べるとなかなかに美味しいようで。

14P~15Pより。
―――奇怪なのは、その確実な予定と、ここを初めて通るという事実が、一種の矛盾する聯関として、私に意識されたことである。―――
「れんかん」
互いにかかわり合っていること。

41Pより。
―――「誰もお前みたいに自慢しやしねえさ、映画や小説にはあらな」
「うん『瞼の母』ってのを見たが、俺あいやになっちゃってね」―――
瞼の母』は1930年『騒人』に掲載された長谷川伸の戯曲。
演劇、映画、ドラマ、漫画や歌謡曲など様々な形式で制作されているみたい。

175Pより。
―――食事が終ると、永松は胸のポケットから煙草の葉を出し、丹念にちぎって、これも大事に取ってあるらしい洋罫紙の切れ端で巻いて、火を点けた。―――
「ようけいし」
海外製のノート紙みたいなもんかな?


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
98Pより。
―――私は砂に折り敷き、いい加減に発射した。銃声は海面を渡り、岬に反射して、長く余韻を引いて、消えて行った。男は一層慌ただしく櫂を動かした。私は笑って、引き返した。―――

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ある日、友人がガスガンの三八式歩兵銃を買ってしまった。
確か11万円ほどする品物で、重いし長いしサバゲーでは使いづらいロマン武器だと思った懐かしい記憶。
そんな彼は今頃どうしているのか、元気でやっているのか、さよならだけが人生か。
・・・・・染みるねぇ(´・ω・`)

 



虎よ、虎よ! 読書感想

タイトル 「虎よ、虎よ!」(文庫版)
著者 ベスター・アルフレッド
文庫 446ページ
出版社 早川書房 
発売日 2008年2月22日

 

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<<この作者の作品で既に読んだもの>>
・今回の「虎よ、虎よ!」だけ


<< ここ最近の思うこと >>

ついに来たぞよこの時が!
以前に読んだ『宇宙船ヴァニスの歌(1)』のあとがきで作者が語っていた作品。
あのエログロぶったぎりエンド小説で有名?な友成純一が、生涯で読んだ本で最も面白くて興奮した本の一つと言うほどの小説・・・一体どんなんだろうか期待に胸がふくらんじゃう。
とはいえ、文字数とページ数の多い昔の海外SF小説・・・・・ちょっと不安になってしまうけど表紙のインパクトある今風なイラストに願いを込めて、いざ読んでみるっきゃない(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

ジョウントと呼ばれる瞬間移動が当たり前に行われるようになった25世紀。
しかし誰一人として、宇宙空間でのジョウントに成功した者はいなかった。

敵の襲撃で大破した宇宙船の残骸。
その中のロッカー内で生存し続けていたガリー・フォイルは、同業者の船であるヴォーガに発見されて救難信号を送るが、なぜか素通りされてしまう。
奇跡から一転、絶望に引き戻されたフォイルは怒りを糧に復讐を誓い、大破した船を応急処置して発進させ小惑星群に住む科学人達に救助される。

回復したフォイルは復讐を遂げるため小惑星群を脱出し、やがて宇宙船に保護されて地球に帰ってきた。

ヴォーガ、化学人種、ノーマッド、パイア、青い患者服を着た巨人、洞窟病院、青ジョウント、ささやきライン、絶望的な叫び、フォーマイル、命令したのは誰だ?、自白阻止剤、燃える男、アルマゲドン、かわいそうなガリー、避難民、スコプツィ植民地、オリヴィア、意思と思惟だ、前人未到のこと、奇形的人間、俺は民衆を信じている、大いなる眼ざめ・・・。

フォイルはヴォーガに復讐するべく計画を練り上げるが、一方で彼を狙う者達も動き出していた。
なぜフォイルは見捨てられたのか?
なぜフォイルを付け狙うのか?
復讐心に囚われたフォイルがたどり着く結末とは如何に!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///これが1956年製のツンデレなのかな///
ジズベラと二人で双発ジェット船に乗りノーマッドへ向かっている最中、フォイルの顔面の刺青が消えたのかを確認する場面。
172Pより。
―――「そうじゃないわ」ジスベラがいった。「あなたがかわってしまったのは内面なのよ。今のあなたが見ているのは大法螺吹きで、ペテン師の食屍鬼よ」
「おい!よせ。おれにかまわないでくれ」
「食屍鬼」ジスベラはきらきら眼をかがやかせてフォイルの顔を見つめながらくりかえした。―――
キレイになったフォイルの顔をえらく気に入った様子のジズベラ。
口では罵りながらもこの後2人はイチャイチャという展開に。
もとからそれなりにイケメンだったのか、様々な経験を経てフォイルの顔つきが変わったのか、気になるし羨ましい。

///ヴォーガで行われた残酷過ぎる所業///
当時ヴォーガに乗っていたケンプシィという男を見つけ出したフォイル。
どうして漂流していた自分を救助しなかったのか問い詰める場面。
319Pより。
―――「質問に答えればおれが死なせてやるぜ、ケンプシィ。なぜ見殺しにした?」
「あんたを助けるわけにはいかなかった」―――
ケンプシィの居た労働施設、真相を聞き出すための処置手術、そしてあの時ヴォーガで行われたこと。
段々と酷くエグイ展開になっていくのがドキドキしたね。
特に600人の避難民たちにたいして、あんな恐ろしいコト・・・ケンプシィが壊れてしまうのも納得。

///アイルランドバーテンダー・ロボットの説教///
選択権を握っているフォイルが社会をどうすべきか、人類をどうすべきか皆に問うが答えは出てこない。
その時、ダーゲンハムの放射能によって故障したバーテンダー・ロボットが答えた。
419Pより。
―――「あなたのご質問に対する答えは、イエスです」
「ありがとう」フォイルはいった。
「光栄でございます」ロボットが答えた。「人間はまず社会の成員であって、つぎに個人であります。あなたは社会が破壊をえらぼうと否とにかかわらず、社会と行動をともにしなければなりません」―――
壊れたバーテンダー・ロボットの説教が染みるねぇ。
それがその希望であり栄光なのですって言葉に救われたような気持ちになる。
結局のところ人類みんな仲良く、人類みんなで一緒に歩いていくってことが真理といういうことかな?
(なんだか以前に読んだ『アイの物語』を思い出しちゃったよ)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///ジズは「あの顔」に何か苦しめられたっけ?///
グフル・マルテルから脱出してフォイルの顔面刺青を消すために馴染みの医師ベイカーの元へやって来たジスベラ。
刺青を消す手術は激痛を伴うのだが、ジスベラは麻酔無しでやってくれと言う。
149から150Pより。
―――「ジズ!あんたは彼がどんなことになるかわからないから、そんなことをいっているんだ」
「いいのよ。くるしめてやるの」彼女がひどくあらあらしく笑ったので、ベイカーはおどろいた。
「あいつもあの顔でくるしめばいいのよ」―――
慎重派のジスベラがフォイルに振り回されてきた苦労はわかるけど、それでも彼のおかげで脱出できたわけだし麻酔無しで手術させるほどの恨みがあったのは不思議だ。
ツンデレなジスベラちゃん・・・・・ツンが痛すぎるよ(; ・`д・´)

///まさかあのページとここで出会うとは///
パイアの爆発に巻き込まれて気絶したフォイルは、周りを炎と溶けた銅に囲まれて絶体絶命のピンチに。
その時、フォイルの体に異変が起こった。
397Pより。
―――フォイルの姿はあらわれては消え、また、あらわれる過程を迅速なテンポでくりかえしていた。
まるで籠のなかに入れられたホタルのようだった。
「あいつは何をしているんだ?何をやろうとしているんだろう?何が起こるんだ?」―――
ネットでラノベのネタページとして挙げられるいくつもの画像。
その中の一つがコレだったのかぁ~(´゚д゚`)
最近のラノベだとばかりに思っていたけど、まさか1956年のモノだったとは驚き。
(そしてここからの展開と描写が無茶苦茶で読むのがホントに辛谷園・・・)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
まず初めにジョウント現象が初めて観測されて一般化するまでが説明されて、そのあとガリー・フォイルの宇宙漂流生活と復讐編が進んでいく。
視点はフォイルを中心に色々な登場人物からの第三者目線で語られていたね。
(大体の海外小説が↑こーゆー作りだけど、これがスタンダードなのかな?)

そして読む前に心配していたとおり、古い海外SF小説だから馴染みのない文章の連続だったよ。
この独特な違和感はなんなんだろうねぇ。
日本語ペラペラな外人が翻訳したらもうちょっと読みやすくなったりするのかな?

///話のオチはどうだった?///
いやいやこれは予想外。
表紙の荒々しい絵から察するに壮絶な結末になるかと思いきや、人間を信じてドタバタに引っ掻き回してからの眠りと目覚め的な・・・・・イイと思います(^-^)
(その後の世界がどうなったのか知りたいけれど、そこを想像するのは読者次第か)

人類が皆等しく成長して考える存在になるためにフォイルがとった行動、この決断が吉と出るのか凶と出るのか誰にもわからない。
427Pより。
―――「それなら彼らにそれをまなばせるか、さもなければ死なせるがいい。われわれは一蓮托生だ。ともに生きのびるか死ぬか、どっちかだよ」―――
とりあえず自分の周りが安全で平和な世界であればそれでいいと考えてるおじさん。
それじゃ駄目なんだろうなぁ~、それでは何も考えていないのと一緒なんだろうなぁ~。
人類皆一つ、そして仲良く共存する。当たり前のことなのに今現在も実現できない(´;ω;`)

///まとめとして///
良くも悪くも、ほんとに読み応えのある小説だったわ。
長かったし文字も多いし馴染みない文章だし、若い頃だったら間違いなく最後まで読めなかったと思う。
読書を続けた結果、想像力が鍛錬されたから楽しむことが出来たのか・・・おじさんも成長したなぁ。

↑んなこたぁどうでもいいとして!
読み終えた今、1956年のSF小説なのに人類の未来に可能性を感じさせてくれる内容だった。
名作っていうのはやっぱりいつの時代でも通用するパイアのような力を持っているのかも。
ジョウントできるようになったら毎日の通勤&帰宅時間が一瞬で済むのかぁ羨ましいなぁ~と思いつつ、ジョウントに伴う社会不安のことを考えたらやっぱり今のままがいいのかな~なんて妄想しちゃうくらい楽しめたから満読感8点!(10点満点中)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

71Pより。
―――ある財閥の家長はわざわざ昔の自動車、古代もののベントレーや、キャディラック、または背の高いラゴンダなどを運転手に運転させて乗りまわしていた。―――
ラゴンダ (Lagonda) は、イギリスの高級車ブランドで1906年に設立された。1947年以降はアストンマーティンの傘下となったようで。
ルパン三世が乗っていたクラシックカーみたいな感じかな?

197Pより。
―――瘴癘が惑星群を毒し古い年は朽ちていった。―――
「えやみ」
悪性の流行病、ときのけ、えきびょう、という意味らしい。

246Pより。
―――この善良そうな医師はきびきびした態度で、古色蒼然たる白い帽子、上着、それに医師の部族をしめる外科用マスクをしていた。―――
「こしょくそうぜん」
長い年月を経て、いかにも古びて見える様子。

251Pより。
―――階段のガレリアは夜になると照明がきらめき、今年の大晦日は非常な雑踏だった。―――
「ガレリア」
広い廊下。屋根を設けた歩行者空間のこと。

264Pより。
―――「きみは新興成金であることを自慢しているそうだね、フォーマイル?」
「はあ。初代のプレスタインの先蹤にならっているしだいです」―――
「せんしょう」
今までにあった実例とか先例って意味らしい。

305Pより。
―――「彼はとても大きいよ。背が高く、ひどく色が黒くて、どことなく不可解なところがある。ボルジアに似ている。確信と粗野のあいだを揺れ動いているように見える」―――
ヴァレンティーノ公チェーザレ・ボルジアは、イタリア・ルネサンス期の軍人・政治家。
ちなみにイタリアにおいては単に「チェーザレ」という名前は一般にガイウス・ユリウス・カエサルを指すので、チェーザレ・ボルジアは現地では「ヴァレンティーノ公」と呼ばれることが多いとか。

311Pより。
―――空気のない月に突然の、眼のくらむような日の出がくるとき、タンクに播種がおこなわれる。―――
「はしゅ」
播種とは、植物の種子を播くこと、つまり種まきである。
それから転じて、種をばらまいたように、細かい点が無造作・無秩序にある状態を言うみたい。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
286Pより。
―――「ちくしょう!行くもんか」
彼女を抱きしめ、やわらかな珊瑚の唇をさぐりあて接吻した。彼女の唇をくるおしく吸い、最後の暗黒がやってくるのを待った。―――

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読んでいて情熱的なキスというモノが伝わってくるシーンだったよ。
まさしく荒々しい野獣と美しい美女・・・・・いや、どちらも野獣なのかも。
気になるのはこの時はフォイルの顔面に入れ墨は浮き出ていたのか、それとも出ていなかったのか。

 

 

 

 

カフーを待ちわびて 読書感想

タイトル 「カフーを待ちわびて」(文庫版)
著者 原田マハ
文庫 346ページ
出版社 宝島社
発売日 2008年5月12日

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<<この作者の作品で既に読んだもの>>

・今回の「カフーを待ちわびて」だけ


<< ここ最近の思うこと >>

原田宗典』この名前を久しぶりに読んだ。
たしか中学時代に親友から勧められた文庫小説、ここからおじさんの趣味読書が始まっていったんじゃないかと思う。
それまで小説なんて一切見向きもしなかったのに、このエッセイは面白おかしく読めたのが不思議よ。

今回はお口直し用に購入した恋愛小説。
けっこう昔から目にしたことのあるタイトルだけど、はてさてどうなんだろうねぇ。
沖縄の離島で繰り広げられるカフーな恋愛ストーリー。
さあ飛び込むぜ!寒気から逃げ込むように飛び込んじゃうぜ(=゚ω゚)ノ(この感想は真冬の二月に書いております)


<< かるーい話のながれ >>

沖縄の与那喜島で雑貨店を営む明青。
家族はおらず、カフーという黒犬とのんびり暮らしている35歳。
近所に住むユタのおばあから「ウシラシ」を貰ったと告げられた夜、明青に一通の手紙が届いた。
差出人は幸という人物で、絵馬に書いてあったことが本当ならば自分をお嫁にもらってください、近々お尋ねしますという内容だった。

ウマい話を疑いつつも期待に胸を膨らませる明青だったが、幸は全く現れる気配がなく変わらない毎日が過ぎていく。
そしてありもしない希望を諦めるために、明青は手紙を燃やしたのだが・・・。

カフー、ウシラシ、巨大リゾート開発、デイゴの小枝、はじめまして、沖縄病、この馬鹿っ、あのこも?、いくじなし、遺言さ、嘘よ、宝物はかえしたのか、最後のお願い、とんだバカヤロー、カフーが待ってる・・・。

翌日、浜へと続く道にあるガジマルの下に彼女は立っていた。
巨大リゾート開発に向けて動きが活発になる与那喜島、そこにやって来た謎の美女。
沖縄の離島を舞台に、一枚の絵馬が繋いだ常夏恋愛物語が始まる。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///東京砂漠は人間しかいないのね///
集会後にダイビングショップを経営する庄司と明青が談笑する場面にて。
143Pより。
―――「神様がいる、って、それ面白いね」
「え、そうですか。絶対、いますって。東京にはいませんからね」―――
東京に神様はおりませんか(笑)
確かに神も仏もいない気がしてくるトウキョウ、居るのは人間達だけ。東京砂漠だなぁ。
(沖縄病の原因は神様がいるからか?まるでヒナミサワ症候群とオヤシロ様の・・・)

///悪人?善人?彼の本性に悩まされる///
おばあが急に倒れたせいで、俊一にきつく当たってしまう明青。
俊一は故郷の島を守る為だと説明して、さらに明青の母親についても語りだした。
213Pより。
―――たったいま、気づいた。俊一の言う通りだった。母を、待っていたのだ。ただ、馬鹿のように待ちわびて。―――
故郷の島を巨大リゾート施設にしようとする俊一、これだけでもうアヤシイって思っちゃう(;^ω^)
俊一の本性がどんなんなのか?良い奴or悪い奴・・・そこんとこも予想しながら楽しませてもらった。
カフーの一族に必ず吠えられるのも謎な設定だった)

///個人的涙腺ユルユルポイント///
家に帰って来るとカフーがそわそわと落ち着きがなく、鎖を外すと一目散に海岸へと走っていく。
カフーを追いかけて行き、誰もいない砂浜で明青はありえない光景を目にする。
245Pより。
―――「びっくりさせようと思って、帰って来たのに、誰も待っててくれない。カフーだけよ、カフーだけが私のことを探しに来てくれた。カフーだけが待っててくれた」―――
彼女の純粋過ぎる気持ち(思い込みが激しいタイプ?)もさることながら、カフーの健気で頼れる存在が胸にグッときた。
動物を絡めた泣きポイントには問答無用で敗北しちゃうのよおじさんは( ;∀;)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///この学校では日常茶飯事なこと?///
明青が小学生の時に上履きを隠されたことがあった。
同級生の情報提供により上履きの隠し場所へ行って、取り戻そうとする場面。
80Pより。
―――梯子を幹に立てかけて足をかけ、三段上ったところで足が滑った。梯子ごと倒れそうになるのを、俊一と渡が下から支え、なんとか留まった。俊一が梯子をしっかり押さえながら言った。
「サンダル脱げ、滑るから。一発で取って来いよ」―――
偶然にも教師たちはみんな近くにいなかったから目撃されなかったのかな?
もしくは木登り遊びなんて普段から行われているから、大人は誰も気にもしなかったのか・・・・・でも梯子まで用意してるし・・・・・でもでも、うぅ~む。

///この島では当たり前な行動?///
ウシラシがきたにも関わらず何もない毎日を過ごす明青は、一人砂浜で煙草を吸いながら子供の頃の苦い思い出に浸る。
87Pより。
―――明青は大きくため息をつくと、立ち上がって短パンの砂を払った。足元に溜まった吸殻に、足で乱暴に砂をかける。―――
えぇ!吸殻そのままですか?
他にも吸殻ポイ捨ての描写がちらほらでていたけど、沖縄の離島では普通なことなんだろか?
なかなかに衝撃的な描写だたよ(・・;)

///それでは足りないぞ、明青よ///
幸とちょっと距離が開いてしまった翌日、急に御嶽の病院に行くことになり取り乱しつつも彼女に書置きを残していく明青。
203Pより。
―――迷った末に、明青は書置きを残した。
ちょっとでかけてきます すぐ帰ります 明青
取る物も取り敢えず、それで出て来てしまった。あいまいな文言を反芻して明青は後悔した。―――
ちゃんと行先と連絡先も書いておくのが普通でしょうに、それにカフーのお世話とかも!
まあ急にあんなこと伝えられたら誰でも正しい行動なんて出来ないだろうけどさ。
明青だけに限らず、このドジッ子成分が恋愛モノに欠かせないスパイスなのだろう。


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
明青を中心とした第三者視点で語られていた。
自信のない主人公に共感しやすかったし(自信が持てない理由にも納得)、幸がやって来るまでの間も沖縄時間の日常が丁寧に書かれていて退屈せず楽しめたよ。
(飼い犬と散歩して、暇な店番して、ナカユクイして、おじさんものんびり沖縄で過ごしたい)

ウシラシがきてから幸が現れるまでの焦らし展開もおじさんは好きだね。
気になる異性を待つ時間って、ドキドキわくわくしちゃうやん(笑)

///話のオチはどうだった?///
終盤にかけての展開で、何でソコで言わないの!なんでソコを聞かないの!って思っちゃう。もしあの時ああしていたらってぶつけようのない感情が胸の内でグルグルしちゃう。あ~もぉ~悶々とする!
けれどこのじれったいような感情を愉しむのが、恋愛小説の醍醐味なんだろうなぁ~たぶん。

なるほどこーゆー終わり方なのね~。予想していたのとちょっとちがったけど悪くない気分、なんて考えながら読了後の気分に浸っている時、閃いてしまった。
最短最善策としてプロの探偵に依頼したら・・・なんて無粋なことを考えちゃうのがおじさん。
(汚れた大人になってしまったよよよ)

///まとめとして///
すべて読み終えた後、天を仰いで神様に尋ねた。
おじさんへのウシラシはいつくるのか?まだ先なのですか!?カフーを待ちわびまくりです(´;ω;`)
そしたらこの言葉が浮かんできた。
295Pより。
―――向こうから来るのを、待つばかりで。そんなことでは、いつまでたっても、汝ぁも幸せになられん―――
そのとおりだよ、おばあ。動かんとアカンのよ!でもどこへ向かってどう動けばいいのかわからない・・・って、そんなことは横に置いといて( `ー´)ノ

明青、幸、カフー、みんな一緒に暮らして幸せになって欲しいと願っちゃうお話だったわ。
中年男性が読む恋愛小説としては個人的にかなり共感しやすかったし、それ以外の部分でもじんわり楽しませてくれたから世の独身オジサンたちにオススメできる作品かと。
どうせなら真夏に海辺で読んでみたかったってことで満読感8点!(10点満点中)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

カフーを待ちわびて」は第1回『日本ラブストーリー大賞』大賞受賞作なのです!

9Pより。
―――その日の夕餉には、おばあ得意のハリセンボンを使った料理、アバサー汁が加わった。これはかなりうまかった。―――
フグの仲間だけど毒はないハリセンボンを使った汁物。
濃厚な肝を入れることによって旨みが豊かになるとか。
うむむ、骨が気になるが食べてみたい。

97Pより。
―――「沖縄の墓は、みんなそうだよ。ずーっと昔から、代々先祖がみんな入ってるんで、大きいんだよね。この辺の墓は、亀甲墓って言って・・・・・」―――
一部でこれは女性の子宮を模したもので、墓の入り口はちょうど産道に当たることになるみたい。
人は、母の胎内から生まれて死ぬとまた帰ってゆく、という「母体回帰」の思想からくるものらしい。
沖縄で昔に行われていた風葬も関係しているんだろうね、たぶん。
(しかしけっこうなスペースが必要になるお墓だな)

174~175Pより。
―――おばあは、昔このあたりの風習だった洗骨の儀式や「別れ遊び」について話をした。死者を悼み、死してなおともに遊ぼうという「別れ遊び」の風習に、幸はことのほか興味を示した。―――
若者の死の直後に若者仲間が墓に赴き、歌舞音曲をともなった通夜とか話しとかをする習俗。
幕内から死者の棺箱を出したり,その蓋を開けて死者を座らせて行われることもあったとか。

解説の345Pより。
―――小説家・エッセイストの原田宗典さんの実妹でもあります。―――
原田宗典実妹ってマジですか!ここで繋がるとはなんという巡り合わせ。
中学か高校生の頃に『スバラ式世界』とか『東京見聞録』とか読んだ覚えがある、だけど内容は全く覚えていない( ;∀;)
ちなみに原田宗典は2013年に覚醒剤取締法違反・大麻取締法違反で現行犯逮捕されたらしい。
オモシロいモノを書く人って、ぶっ飛んでるなぁ~(笑)

カフーを待ちわびて」は2009年に実写映画化されている。
予告動画を見てみたけど、主題歌になっているmoumoon 『EVERGREEN』が中々良い感じだった。
機会があれば見てみたい、ほんこん宮川大輔の演技も見てみたい(笑)


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
218Pより。
―――台風が過ぎるのを待って島に逗留していた人々だろう。日焼けした若者たち、浮き輪を持った子供たち、麦藁帽子を被った老人たち、それに、白いワンピースの、黒い犬を連れた・・・・・明青は、わが目を疑った。
大きく、大きく手を振るひとがいる。―――

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青空にグラデーションをつけたかったんだけどやり方がわからない。
次回までに調べておかなくては。
あ、船を待っていた他の老若男女たちも書き忘れた・・・・・まあ、何事も妥協は大事だよね(;^ω^)

 

EVERGREEN

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